EXは“感情の設計”であり、EQは“行動の設計”である

これまで多くの企業は、EX(Employee Experience)を採用〜退職までの一連の従業員接点を整える取り組みとして捉えてきました。
しかし近年、デジタル化・多様化・曖昧性(VUCA)という外部環境の激変により、EXの本質は単なる“体験価値の向上”ではなく、

従業員の感情をどう扱うか。
その感情がどのように行動に転換され、組織成果に寄与するか。

という心理資本の設計へと議論が進化しています。
ここで重要な役割を果たすのが EQ(Emotional Intelligence:心の知能指数) です。
JapanEQが示す27の行動特性は、従業員がどのように感じ、考え、行動するかを捉え、その感情起点の行動変容をモデリングするフレームとして極めて有用です。

EQ(Emotional Quotient)とは?

Emotional Quotientの略で、「心の知能指数」や「感情的知性」と訳されます。
「自分と相手の感情を把握し、その場の状況に応じて適切に感情をコントロールして思考や行動を導く能力」とされています。
先天的な要素が強いIQ(知能指数)と異なり、EQは日頃の行動や習慣を変えることで向上が見込めます。
自分の感情を抑える、感情を高める、相手の感情を読みとる、思いやる、支援するという感情をマネジメントする力が、個人を成長させていきます。

EXとEQの関係は「因果関係」であり「相互作用」である

EXとEQは、一方向的ではなく、相互に影響し合う構造を形成します。

① EX → EQ

EXが従業員に提供されると、個人のEQスコア、とりわけ 自己認識・ストレス耐性・対人能力・コミットメントに影響が及びます。

例:「定期的な1on1」 → 内的自己意識が高まる
例:「心理的安全性の高い環境」 → 抑うつ性・不安耐性が改善する

② EQ → EX

一方で、同じEX施策を受けても、個人のEQの状態に応じて体験価値が変わります。

例:「フィードバック文化」
EQ高 → 自己洞察が深まり行動改善が促進
EQ低 → 防衛的反応が強まり、逆にストレス増大

このように、EXは組織一人一人のEQが媒介変数(Medium Variable)となり決定されるのです。

行動特性27項目で読み解く、EXがEQに作用するメカニズム

JapanEQの27行動特性は、感情・認知・行動を統合して理解するためのモデルです。
ここではより体系的に3つの知性(心内・対人・社会知性)ごとにまとめてみます。

心内知性

自分の感情と向き合い、内側から行動を生み出す力

心内知性は、自分の感情や思考の流れをつかみ、ストレスを調整し、前向きな行動へつなげるための基盤です。
職場での1on1やキャリアの対話、心理的安全性、適切な承認などの体験は、自己理解を深め、ストレス耐性や意欲を自然と高めます。
一方で、振り返りの余白がない、失敗が続く、成果が見てもらえないといった環境は、自己認識の質を下げ、心のエネルギーを奪ってしまいます。

EXが最も影響を与えるのがこの心内知性であり、個人の「働く姿勢」を根本から形づくる領域です。

対人知性

他者を理解し、信頼を築き、関係を前に進める力

対人知性は、相手の感情を読み取り、自分の意見を適切に伝え、健全な関係を維持していくための能力です。
上司や同僚が丁寧に聴いてくれる、安心して意見を言える、対話を通じて誤解を解消できる。
このような体験は、自然と対人理解力や自己表現力を育て、協働の質を高めます。
反対に、発言が遮られる、意見が否定される、対立が放置されるなどの環境では、人は心を閉じ、対人スキルも伸びなくなります。

対人知性は、職場文化の影響が最も顕著に表れる領域であり、チーム力やマネジメント力の“土台”となります。

社会知性

組織の一員として役割を理解し、協働し、成果を創る力

社会知性は、組織全体を理解し、自分の役割を認識したうえで、周囲とつながりながら成果をつくる知性です。
経営との対話、越境的な経験、チームでのチャレンジ機会などのEXは、組織への理解を深め、コミットメントを高めます。
一方、分断された組織や無関心な風土では、自分が何のために働いているのかを見失い、組織とのつながりが弱まります。

社会知性は、個人の力を組織成果へと転換する橋渡しであり、組織全体の成長速度に直結する能力です。

3つの知性はEXによって連動しながら育つ

  • 心内知性が高まると、他者を理解する余裕が生まれる
  • 対人知性が育つと、協働の質が高まり、社会知性の発揮につながる
  • 社会知性が磨かれると、組織の中で自分の役割が明確になり、再び心内知性が強化される

この循環をつくる起点となるのが 従業員体験(EX)の質です。

EXは制度の話ではなく、人がどのように感じ、どう成長するかをデザインする取り組みです。
EQの3つの知性は、EXがどこに効き、どこが改善ポイントかを見極める“地図”として機能します。

組織は何から始めるべきか

組織が「人が育ち続けるエコシステム」へと進化するためには、EX(Employee Experience)とEQ(Emotional Intelligence)を連動させた変革が不可欠です。組織が取り組むべき具体的なステップを体系的にまとめます。

ステップ1:現状のEQプロファイルを可視化する

まず、組織のEQ状態、一人一人のEQを正しく把握することから始まります。
JapanEQの27行動特性の偏差値を分析し、メンバーの特性分布、強みの領域、組織全体のEQバランスを可視化します。
これにより、組織がどのEQ能力に課題を抱えているのか、またどの領域が成果創出の源泉となっているのかが明確になります。

ステップ2:EXとの因果関係を分析する

次に、EQの高低を生み出している「背景(EX)」を紐解きます。

次の段階では、組織内で観測されるEQスコアの高低が「なぜ」生まれているのか、その背後にあるEX(Employee Experience:職場体験・働く環境・マネジメントとの関わり)を丁寧に紐解いていきます。
EQは個人特性だけで決まるものではなく、日常的に体験している環境要因から強い影響を受けるため、この因果構造を明確にすることが極めて重要です。

  • 高スコア/低スコアを生み出しているEX要因を特定
  • 部署別・チーム別に存在する差異の明確化
  • 管理職のマネジメントスタイルがEQに与える影響度の定量化

ステップ3:EQ向上に寄与するEX施策を設計・強化する

EXとEQの因果構造が明確になったら、EQを高めるための施策をデザインします。特に以下の領域が高い効果を示します。

  • 1on1やキャリア自律支援
  • 心理的安全性を高めるチーム文化の醸成
  • 承認・フィードバックの仕組みづくり
  • ダイバーシティ理解を深めるプログラム
  • 組織視点を育む越境学習や異動機会

これらは社員の「感情」「動機」「人間関係」「挑戦志向」を直接活性化し、EQ行動の向上につながります。

ステップ4:マネジメント層を中心にEQを組織的に導入する

JapanEQの研究および現場データから、「部下のEQは上司のEQに強く影響される」という重要な特性が明らかになっています。
したがって、管理職のEQ開発は、組織全体のEQ水準を引き上げるうえで効果が高い施策となります。
EX施策は多岐にわたりますが、そのなかでも「マネジメント層がEQを発揮できるようになる」ことほど広範囲に波及効果を生む取り組みはありません。
1人のマネジャーが変われば、その影響を受ける部下5〜10名以上のEQ・働きがい・成果創出力が変わり、チーム単位でパフォーマンスが改善します。
マネジメント層がEQを体現することで、部下の成長速度、チームの心理的安全性、パフォーマンスが連鎖的に高まっていきます。

ステップ5:継続測定とフィードバックでEQサイクルを回す

EQ向上は、単発の研修やアセスメントで完結するものではありません。
重要なのは、継続的なサイクル運用です。
測定→改善→行動変容→成果創出→組織文化への定着。
この循環が確立されることで、組織は「人が育ち続けるエコシステム」へと進化します。
EQに基づく成長が自律的に生まれ、EXと成果が持続的に好循環を生み出す組織文化が構築されます。

EXは制度ではなく、感情のデザイン。
EQは性格ではなく、行動のスキル。

この二つが結びつくと、組織は単なる集団ではなく、

一人ひとりの感情が健全に流れ
その流れが協働を生み
新しい価値を創り続ける組織

へと変貌します。

今求められているのは、テクノロジーでも制度改革でもなく、
人間理解を基盤としたマネジメント知”の再構築です。
EX × EQ はその中心に位置する、これからの組織の標準言語です。

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